2020年9月号 野生動物の役割

動物たちは獣でしょうか

 7月上旬、なずなの里芋畑にイノシシがやってきました。収穫はまだまだ先の小さい里芋(赤茅のみ)があっという間に食べられてしまいました。なずなの畑と同様に、日本中の農作物がクマ、サル、イノシシ、シカ、タヌキ、キツネ、ヒヨドリ、カラス、スズメ・・・に食べられています。これらの生き物たちからお米や野菜たちを守るために、電気柵やトタンを張り巡らし、空からガラスなどの野鳥を防ぐためにネットを張り巡らして対応しています。

 数年前までは、カラスに対して黒糸を張っておくと畑に入ることはなかったのですが、最近では何の効果もなく、ネットを張っても網の目が大きいとそこから入り、スイカなどが襲撃されます。
彼らも命がけなのです。

 稲の方は、イノシシ、シカに入られると深刻な被害が出るので、その対策として町を挙げて農地をステンレス製の柵で囲っています。二十年ほど前から税金を使ってこの事業が始まりや今ではどこまで行っても田んぼの周りは柵だらけで、人の方が隔離されてしまったような気分になります。金網を張り巡らしても、その網を押し上げて中に入り、柵の中でイノシシやシカを保護(?)しているようなところもあります。のどかな美しい田園風景は幻と消えてしまいました。

イノシシの使命は

 思い返せば、一番に農地を荒らし始めたのはイノシシで、40年くらい前からです。初めの頃は、サツマイモ、大豆、里芋(なぜか赤芽だけ)で、他の作物は食べなかったのですが、生きるためには好き嫌いなどは言っていられないのでしょう、次々にメニューを広げ、デンプンを含むものは全て食べるようになりました。このような中で、野菜やお米を育てて皆さんに届けるには、かなり苦労があります。

 何故イノシシがこのように農作物を荒らすようになったのか。イノシシは何のためにこの地球上に生活しているのか。彼らの使命はいったい何なのでしょうか?

 イノシシが食べているものを調べてみると、木の実や山芋竹の子、サワガニ、ミミズ、モグラ、野ネズミやマムシで、これらが増え過ぎないように自然循環の中で大切な使命を果たしているのです。

 それなのに人間はイノシシや自然界に生活する全ての生き物の関わりを知ろうともせずに、唯々金儲け目的でスギやヒノキばかりを植えつけ、大切な自然林をなくしてしまいました。

 その為、自然界のバランスが壊され、生物が次々に絶滅しています。人里から遠く離れた山奥で平和に暮らしていたイノシシの生活圏が奪われてしまったために、イノシシにとって危険な人間の生活圏に入ってきたのです。

 猟師さんの話では、イノシシやシカは昔の方がたくさんいたらしく、今は随分数が減っているそうです。野生動物が増えたから農作物を荒らしたのではないということがここでも証明されています。

木を見て山を見ず

 なぜこのようになったのか?因果応報の法則で原因を追究していくと答えが見えてきます。原因は人災です。60~70年前、田畑でイノシシやシカなどの野生動物を見たことはありませんでした。なぜかというと、そのころまでは奥山に樫の木や椎の木があり、彼らの食糧となる木の実がたくさんあったのです。ですから危険を冒してまで里に出てくる必要はなかったのではないでしょうか。

 これを壊したのが、人間の行った林野政策です。70年ほど前、「はげ山じゃ、木を植えよう。」これを合言葉に補助金を出して、それまで大切に守ってきた牛馬を養う草場や入会地にこぞって木を植え始めたのです。農業政策では、化学肥料は素晴らしいと学校で教え込み、一方ではエ業化を進めるために、農村の若者が金の卵などと持ち上げられて都会へと連れ出されていきました。その結果、農家に人手がなくなると、農業構造改善の名目で区画整理を進め、それを農業近代化と偽り、大型農業機械が使えるようにしました。そして、牛馬は仕事を失い、日本中の農家から牛馬が消え、有畜、有機農業は消えてしまいました。

 林野政策はとどまるところを知らず、補助金を出し続けて草地に木を植え終わると、次は雑水林を標的にしました。生長が早いスギやヒノキばかり植えこみ、みるみるうちに野生動物の餌となる木の実がなくなっていったために、住み慣れた奥山から餌を求めて里に下りてきたのです。

因果応報。自然と人の未来に託す

 かわいそうなのは野生動物のほうです。山は雑本林が消え、木の実や落ち葉を失い、栄養豊富な腐葉土も減少していきました。スギやヒノキでは保水することがほとんどできないため、命の水、地下水を失いつつあります。補助金で植えこんだスギ山は、密植したまま手入れされていないので、50年60年たっても太くなれず、大地に光が入らないので草一本ないのです。

 傾斜地の山に降った雨は山肌を濁流となって流れてしまい、雨が上がると水が消え、川の水はなくなり、少し流れる水はスギの葉に微量に含まれる青酸により酸性の水になり、しかもミネラルが少ないため、プランクトンは湧かず魚がいなくなる。

 一方、農地には化学肥料、農薬で生き物を壊滅させ、死の農地と化してしまった結果人を健康で元気にしてくれる食糧が今ではダイオキシンまみれとなり、ニ人に一人が癌という世の中となってしまいました。汚染された食糧を食べる野生動物もいずれ難病奇病となり、消えてしまうと思います。

 このように次から次へと食物連鎖の鎖を外し、自然界の循環の輪を切っていけばどうなるのか。
今、人々が気付かなければ大変なことになります。人間の限りない欲望のために、今後もどれだけ多くの犠牲が出るのでしょう。作物を荒らされた結果だけを見ると、こん畜生と思いますが、どうしてこうなったかを探っていくと常に出てくる答えは人災です、一人でも多くの人に自分自身で考えてもらいたい。自分たちにとって何が一番なのかを。

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